循環中に新しい湯が貯湯槽から一定間隔で送りこまれている。しかし、補われる新しい湯とはどんなものだろうか。これがろ過循環湯のチェックポイントとなる。個性豊かで中身が濃い、温泉愛好者を喜ばせる源泉ほど、スケールや湯の華を生じやすい成分が多く含まれる。温泉提供者側には油断ならない大敵といえるだろう。そのため、多くのろ過循環湯では、湯の香や色づきの元となる成分が、浴槽に注ぎこまれる以前に除去されてしまう。そして、どれも似たり寄ったり無色透明無味無臭な、ただの温水を浴槽に注ぐ。
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じつは、源泉をあらかじめろ過するのには、ほかにも理由がある。源泉の個性を表す湯の華を、ゴミや汚れと勘違いして、嫌う利用者が増えたせいなのだ。とくに若い利用者は、身近な温泉施設がそうであるように、無色透明無味無臭のろ過された湯が温泉だと思いこまされてきたので、たまに湯の華が浮かぶ「本物の温泉」に出会うとぎょっとする。それで苦情が出て、いっそう、ろ過が進むという情けない構造になっている。また、ろ過循環湯では、源泉をろ過した新しい湯と一緒に、相当量の水が加えられている。こうして繰り返し水増しすることで、数ある大浴槽を満たす湯量を補っている。湯を循環再利用するだけではとても足りないのだ。そのため大型ろ過循環湯では、光熱費に加えて水道代も高くつき、入浴料にはねかえる。入浴料が高い温泉施設は、施設建設費が高かっただけでなく、こうした事情があると見てよい。新しく追加するろ過後の源泉量に対し、加水量はその二倍、三倍といった具合。源泉の占める割合はどんどん低下し、源泉は浴槽を満たす湯のほんの一部の原料でしかなくなる。天然果汁一〇%ジュースよろしく、大半は賞味期限切れの「源泉一〇%、水九〇%温泉」とあいなってしまう。